大阪市長選・課題を追う 負の遺産、5900億円超す財務リスク
長い専用エスカレーターで地上252メートルの展望台まで昇り切ると、目の前に大阪市の夜景が広がった。市の第三セクター「大阪ワールドトレードセンタービルディング」(WTC、住之江区)の55階展望台。「西日本一高い」とされる展望台は絶好の夜景スポットだ。ここからは市が抱える「負の遺産」や大型事業も一望することができる。
眼下にはWTCと同様に経営再建に苦しむ「アジア太平洋トレードセンター」(ATC)。すぐ近くに大阪オリンピック誘致に失敗した舞洲(まいしま)、現在も埋め立てが続く夢洲(ゆめしま)が広がる。東に見える通天閣近くには阿倍野再開発地区。ここは約2150億円もの赤字が見込まれている。
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大阪市の試算では、「負の遺産」として確定し、追加負担の必要があるのは阿倍野再開発事業など3099億円。WTCやATCなど市負担が未確定の財務リスクは2844億円ある。WTCなど三セクが他と異なるのは、特定調停成立時に金融機関の債権について市が損失補償した点だ。
住民訴訟で、大阪市部局の入居賃料が割高との鑑定が出て以降、両三セクの経営再建計画の行き詰まりが指摘されている。2次破綻(はたん)すれば、市の負担に直結し、特定調停の妥当性も問われる。
損失補償については川崎市が金融機関に行った損失補償を「違法」と指摘した昨年11月の横浜地裁判決がある。しかしWTC・ATCについて、銀行関係者は「横浜地裁判決でも返還請求自体は棄却された。特定調停のスキームを今さらひっくり返すのはおかしい」と、2次破綻時の債権放棄については応じる余地はないという姿勢をみせる。
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8日、焦点の住民訴訟の審理が大阪地裁で行われた。10分あまりの審理を終え、法廷を後にした原告の市民グループ見張り番の松浦米子代表世話人の表情はさえなかった。仮に裁判で勝ったとしても、厳しい市民負担の現実を突きつけられる可能性が高いからだ。
松浦さんは「WTCの問題は、市全体を揺るがす震源地のような問題。市民の負担がどうなるのか、もう少し具体的なシミュレーションを出し、市民みんなで考えられるような仕組みを作ってもらいたい。見張り番だけが取り組んで済むような問題ではないんです」と話した。
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