Wednesday, November 14, 2007

<被爆体験者>長崎「地域外」の22人初提訴

長崎原爆に遭遇しながら、国が戦後定めた被爆地域外にいたなどとして、医療費給付などの支援が限定されている「被爆体験者」22人が15日、国や長崎県、長崎市に対し、被爆者健康手帳の取得申請を却下した処分の取り消しなどを求め、長崎地裁に提訴した。戦後62年間、健康被害に苦しめられながら、援護制度の枠外に置かれてきた被爆体験者による訴訟は初めて。

 原告は、全国被爆体験者協議会の小川博文会長(64)ら、現在長崎市東・西部に住む18人と長崎県諫早市に住む4人の男女計22人(60~80代)。訴訟では、体調不良を訴える各原告に対する放射線の影響評価や、原爆に遭遇した地域によって被爆者と区別することの是非が争点になる。

 長崎市は平野部が南北に細長く、低い山を隔てた市の東・西部は1957年制定の原爆医療法(現在の被爆者援護法)で「放射能の影響が乏しい」とされて、被爆地域には認定されなかった。22人はいずれもこの被爆地域外に居住し、45年8月9日の原爆に遭遇した。

 訴状によると、22人は甲状腺がんや白血病など原爆に起因するとみられる疾病にかかったため国に被爆者健康手帳の交付を求めたが、今年6~10月に相次いで却下された。このため、国から交付事務を委任されている県、市に処分の取り消しを求め、国などには被爆者と同じ健康被害を受けながら、医療費の自己負担を強いられているとして1人あたり1000円の損害賠償を求めた。

 損害賠償額を1000円としたことについて、原告側は「現在、各原告の損害額を調べており、裁判を起こすための仮の金額」としている。

 小川会長は「厚生労働省に勝手に『被爆体験者』という名前を付けられ、被爆から62年たった今でも不条理な差別を受け続けている。私たちも『被爆者』であることを認めてほしい」と話している。【錦織祐一】

 ◇被爆体験者 長崎市の爆心地から半径12キロ圏内で原爆に遭遇しながら、57年制定の原爆医療法(現被爆者援護法)で被爆地域外を対象とする精神関連疾患の医療費支援しか受給できない人。対象者は約1万人だが、被爆当時、幼児で原爆の記憶が乏しいなどの理由で、受給認定されたのは約7200人にとどまる。一方、被爆者はほとんどの疾病に対する医療費と健康管理手当(月3万3800円)などが支給される。

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