ゲーム形式で「社会」学ぶ 金銭感覚養いフリーターやニート化予防
若者が安易にニートやフリーターになるのを予防しようと、高校生に「稼ぐ」「使う」の基礎的金銭感覚を養う授業をNPO法人(特定非営利活動法人)が始めた。ゲーム形式で1人暮らしをシミュレーションし、生活していけるかどうかを学ぶ。現実の生活にいくらかかるか、収入をどう得るか、将来はどうするかなど、これまで具体的に考えたことのなかった生徒たちに新鮮な驚きを与えている。(慶田久幸)
■食費月いくら?
この日は茨城県立守谷高校(飯村省一校長)の3年生を対象に行われた。
生徒は1カ月20万円の収入と仮定して、家賃、光熱費、食費など1人暮らしに必要な生活費を予想してシートに書き込んでいく。
講師の松野賢太郎さんが声をかける。
「食費1万円? そんなテレビ番組あったよね」「衣服代3万円? 女の子は大変だねえ」
女子生徒から質問が出た。「国民健康保険って何ですか」「住民税は払わなきゃいけないの?」
松野さんが分かりやすく答えたあと正解を読み上げた。
「家賃約5万3000円、食費約2万4000円、衣服費約4000円-」
松野さんによると、携帯電話代金を除くとほとんど正解はないという。
次はくじをひいて「正社員」「派遣社員」「フリーター」に振り分ける。もう1枚のカードには月収15万円、30万円、100万円と書かれている。
収入を派遣は1日1万円、フリーターは時給1000円と仮定し、何日または何時間働くと指定された金額になるか計算する。
100万円のフリーターの場合、月に1000時間働く必要があり、「絶対できねえよ」と笑い声が起きた。
さらに「30歳 結婚している 賃貸マンション」などと書かれた暮らし方カードをひいて、自分の収入から、この生活ができるか検討する。
最後に松野さんが「正社員は責任が大きいが収入は安定している。フリーターは時間に自由がきくが安定していない。どう考えるかは自由だが、安易に選ぶのはやめてください」と結んだ。
■家計を知らない
授業はNPO法人「育て上げ」ネットが開発した「マネーコミュニケーション」。同法人はこれまで、主に若者、特にフリーターや引きこもりの就労支援を行ってきた。
同法人の工藤啓理事長は「ニートやフリーターの中にも自立して働きたいと思っている人がたくさんいる。だが、1人暮らしにいくらかかるのか、税金や年金は何か、まったく知らないのが現状だ」。
給与が振り込みになり、親は子供の前で家計の話をしなくなったため、子供たちはリアルな金銭感覚が分からなくなっているという。
開発には東京大学社会科学研究所の玄田有史教授やファイナンシャルプランナーも参加した。
「以前は勉強をしていれば将来が開けた。将来が見えない現在、展望を見せておかなくては今を頑張れない」(工藤理事長)
この日は50分間だったが、後半に収入を考えながら必要なもの、ほしいものの購入を考える100分の授業もある。講師は高校に無料で派遣され、これまで約40校で実施されてきた。
授業後、生徒の金井鉄男君(18)は「面白かった。やはり正社員にならないと不利なことが分かった」、服部彩さん(18)は「1人暮らしだとお金が不安だ」と反応。短大へ進学して1人暮らしを始めるという菅井阿子さん(17)は「すごく実感があった。奨学金をもらってもきついなあ」ともらした。
田中浩学年主任は「新鮮な授業で、税金などの知識やイメージを持たない生徒にもすんなりと理解できたようだ。個人差はあるが、生徒たちは刺激を受けて、いろいろ考えている」と評価。来年度以降も授業に取り入れたいと話していた。
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