Friday, November 16, 2007

ネットいじめ 解決もネットの時代? 匿名性、気安さ…利用者じわり

インターネットのサイトに悪口を書き込むなどの「ネットいじめ」が社会問題となるなか、あえてネットを利用していじめ解決につなげようというサイトが注目を集めている。個人が特定されないネットの持つ「匿名性」を「相談しやすい環境づくり」につなげようというもので、利用者が増えつつある。不適切な書き込みを排除しなければならないといった課題もあるが、いじめ解決への選択肢のひとつになりそうだ。(道丸摩耶)

 「死にたい 返事待ってます」。いじめ対策サイト『@いじめ』の中にある「いじめ相談掲示板」に10月初旬、匿名の投稿者からこんな相談があった。学校でいじめに遭っているという書き込みには、「死ぬのはまだ早い。絶対ダメ」「一緒に戦うよ」など100件を超す返信があった。

 「顔の見えない相手でいいから話を聞いてくれる人がいる環境をつくりたかった」と話すのはサイトを運営する「ファンクション・ティ」(兵庫県西宮市)の田尾耕太郎さん(27)だ。家族がいじめに遭ったことを知って「誰かに話せる場所」の必要性を痛感した田尾さんは今年4月、『@いじめ』を立ち上げた。

 メールのやりとりを通して本人や家族のカウンセリングを行うサイトはこれまでもあったが、『@いじめ』は相談内容が不特定多数の目にとまり、その分誰もが気軽に相談に乗れる気安さがある。サイトの立ち上げから3カ月くらい経過したころから書き込みが増え、現在は1日3000~4000件のアクセスがあるという。

 しかし、利用者の広がりとともに、「いじめられる方が悪い」といった不適切な書き込みも増えた。そのため、連続して不適切な書き込みをした利用者のアクセスを禁止するなどの対抗手段を取っている。開設から半年が過ぎた現在では、「サイトを見ていじめを解決した人が、今悩んでいる人にアドバイスをするという良い循環になってきた」と成果も現れた。

 一方、不特定多数が参加できる掲示板とは異なり、自分専用サイトにいじめられた記録を書き込んで解決をめざすものもある。学習支援会社ブラストメディア(兵庫県福崎町)が開発した『いじメモ』だ。

 いじめを受けた子供がネット上にその記録を書き込むもので、9月から運用が始まった。書き込みは本人しか見ることができず、いじめの事実が時系列で並べられるほか、書き込んだ回数により「親に相談できましたか?」などのアドバイスが自動的に表示される。

 開始1カ月間の利用者は約10人と少ないが、吉田憲司同社代表(46)は「いじめを受けた子供は、なかなか周囲に相談できない。書き込むことで自分の心と対話し、解決への一歩を踏み出してほしい」と話す。

 ネットを利用した新しい手口のいじめが問題になる中、吉田代表は「ネットいじめへのアンチテーゼになるかもしれない」と、救済サイトが秘める新たな可能性を指摘している。

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